ゴメンナサイ。 誰かに謝られた気がした。 振り向くと、扇風機がうなだれていた。 ぎょっとした。 時刻は夜中の1時すぎをまわっていた。 台所で新聞を見ていたときのことだった。 え?え?なんで謝るの? 君はなんにも悪くなんか・・・ 心の中で言いかけて、ハッと今日のことを思い出した。 昼間、母から怒られていたのを私は見ていた。 もぉ!この扇風機、勝手にタイマーになって止まっちゃうじゃない。 どおなってんの? そして夜も父から怒られていた。 タイマーなんかしてないのに何で止まるんだっ! タイマーもいうこときかないのか。 そうだったのかい。君はそれを気にしてたのかい。 扇風機が急に愛おしくなった。 いいんだよ。君はよくがんばってるじゃないか。 この扇風機、ピノコが生まれた年に我が家にやってきたと聞いた。 かれこれ数十年、我が家で唯一ピノコと同級生なのである。 言ってみれば、同じ屋根の下で苦楽を共にしてきたのだ。 だから、だからお願い。 これからも我が家にさわやかな風を送り続けておくれ。 ちょっとぐらい調子悪いときだってあるさ。 君が役目を終えて去っていくのは寂しすぎる。 いつもそこにいてくれることを当たり前に思っていた。 はじめて扇風機の気持ちを知った夜だった。 翌朝、ふと扇風機に目をやると、 何事もなかったかのように、上を向いてさわやかに風を吹かせていた。 私はフッと安心して、会社へと出勤したのであった。 気に入ったら押してね!
by pinoco_m
| 2008-07-15 18:02
| ●ピノコ’Sストーリー
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